廃プラスチック回収とは。どこでできる? 私たちがすべきこと

私たちの生活に欠かせないプラスチック。軽量で加工しやすく、便利な素材である一方、使用後に適切に処理されなければ深刻な環境問題を引き起こします。その解決策の鍵を握るのが「廃プラスチックの回収」です。
この記事では、なぜ廃プラスチックの回収が重要なのか、どのように回収され、リサイクルされているのか、どこで回収できるのか?そして私たちが今日からできる具体的な行動についてご紹介します。
1. なぜ廃プラスチックの回収が重要なのか?
「ごみを減らすため」だけではありません。廃プラスチックの回収には、私たちの未来を守るための重要な理由があります。
- 環境汚染の防止 適切に回収されなかったプラスチックごみは、川や海に流れ込み、世界的な「海洋プラスチック問題」を引き起こします。野生生物が誤って食べてしまったり、細かく砕けたマイクロプラスチックが生態系に悪影響を与えたりすることが懸念されています。
- 限りある資源の節約 プラスチックの多くは、限りある資源である「石油」から作られています。廃プラスチックを回収し、資源として再利用することは、新たな石油の使用量を減らし、資源の枯渇を防ぐことにつながります。
- CO2(二酸化炭素)排出量の削減 プラスチックごみを単純に焼却処理すると、地球温暖化の原因となるCO2が排出されます。リサイクル(特にエネルギー回収ではない方法)を進めることで、焼却量を減らし、CO2排出量を削減する効果が期待できます。
- 最終処分場(埋立地)の延命 回収・リサイクルされずに埋め立てられるごみが増え続ければ、最終処分場はすぐに満杯になってしまいます。プラスチックを資源として循環させることで、処分場の負担を減らし、長く使い続けることができます。
2.廃プラスチックはどこで回収される?
私たちが排出した廃プラスチックは、主に3つのルートで回収されています。
① 自治体による回収(家庭ごみ)
最も身近な方法です。「容器包装プラスチック(プラマークのあるもの)」や、自治体によっては「製品プラスチック(バケツやおもちゃなど)」も分別・回収の対象となります。
注意点: 分別ルールは自治体によって大きく異なります。「汚れたものは洗って出す」「汚れが落ちないものは可燃ごみへ」など、お住まいの地域のルールを必ず確認しましょう。
② 事業者による回収(事業系ごみ)
企業や工場などから出る廃プラスチックは、「産業廃棄物」として専門の業者が回収・処理します。企業が事業活動(製造、物流、オフィス業務など)に伴って排出した「廃プラスチック」は、原則として「産業廃棄物」に該当します。
産業廃棄物は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に基づき、排出した企業(排出事業者)の責任において適正に処理することが厳しく義務付けられています。
企業が廃プラスチックを廃棄(処理・リサイクル)する際の基本的な流れ
【Step 1】廃棄物の把握と分別
まず、自社のどの工程から、どのような種類の廃プラスチックが、どのくらい発生しているかを正確に把握します。
把握
梱包・出荷時に使うフィルムや緩衝材、製造工程で出る端材、不良品、オフィスで出る文具など。

分別
廃プラスチック(例:PP、PE、PETなど)と、その他の廃棄物を明確に分けます。

【Step 2】適切な保管
排出した廃プラスチックは、処理業者に引き渡すまで、法令で定められた「産業廃棄物保管基準」に従って適切に保管する必要があります。
- 周囲に囲いを設け、見やすい場所に「産業廃棄物の保管場所であること」を明記した掲示板を設置する。
- 廃プラスチックが飛散したり、流れ出たり、悪臭が出たりしないように管理する(例:フレコンバッグに入れる、シートで覆う)。
【Step 3】処理方法の検討と委託先の選定
排出する廃プラスチックの性質(汚れの有無、素材の純度など)に応じて、最適な処理方法(リサイクルまたは処分)を検討し、それを実行できる業者を選定します。
- 処理方法:
- リサイクル: マテリアルリサイクル(原料に戻す)、ケミカルリサイクル(化学的に分解)、サーマルリサイクル(燃料として熱回収)
- 処分: 焼却、埋立(リサイクルが困難な場合)
- 業者選定:
- 委託先は、都道府県などから「産業廃棄物処理業」の許可を得ている業者でなければなりません。
- 「収集運搬」と「中間処理(破砕・溶融など)/最終処分」の許可証(コピー)を必ず確認し、委託する廃プラスチックの品目が許可内容に含まれているかを確認します。
【Step 4】委託契約の締結
処理を委託する業者(収集運搬業者、処理業者)とは、必ず「書面」で「産業廃棄物処理委託契約書」を結びます。
- 口約束や覚書だけでは法律違反となります。
- 契約書には、廃棄物の種類、量、処理方法、料金、契約期間などを明記します。
- 多くの場合、収集運搬業者と処理業者が異なるため、それぞれと契約(または三者間契約)が必要です。
【Step 5】マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付・管理
廃棄物を処理業者に引き渡す際、排出事業者は「マニフェスト」を交付する義務があります。これは、廃棄物が適正に処理されたかを確認するための伝票です。

- 交付: 廃棄物の引き渡し時に、収集運搬業者にマニフェスト(A票~E票などの複写式伝票)を渡します。
- 返送・確認:
- 運搬が終了したら、収集運搬業者から「B1票」「B2票」が返送されます。
- 処理(中間処理・最終処分)が終了したら、処理業者から「D票」「E票」が返送されます。
- 保管: 全ての処理が完了したマニフェスト(A票、B2票、D票、E票など)は、法律で定められた期間(5年間)保管する義務があります。
- ※現在は「電子マニフェスト(JWNET)」の利用も普及しており、管理が簡素化できます。
【Step 6】行政への報告
前年度のマニフェスト交付状況について、定められた「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」を作成し、管轄の自治体(都道府県・政令市など)に提出します。(※電子マニフェスト利用分は報告不要など、例外あり)
注意すべき点
- 排出事業者責任の徹底: 万が一、委託した業者が不法投棄などの不適正処理を行った場合、委託した排出事業者(あなたの会社)も責任を問われる可能性があります。許可証の確認や、信頼できる業者選定(現地確認など)が非常に重要です。
- リサイクルの推進: 2022年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」により、企業には廃プラスチックの排出抑制とリサイクルへの積極的な取り組みが、以前にも増して求められています。単なる「廃棄(焼却・埋立)」ではなく、「リサイクル」を前提とした処理フローを構築することが、企業の社会的責任(CSR/SDGs)の観点からも重要です。
もし具体的な処理業者の選定や、法的な要件についてさらに詳しい情報が必要な場合は、お近くの産業廃棄物処理協会や、管轄の自治体の環境・廃棄物担当部署にご相談されることをお勧めします。
③ 店頭などでの自主回収 スーパーやコンビニ、衣料品店などが独自に行っている回収プログラムです。
- 例:
- スーパー:食品トレー、ペットボトル、牛乳パック
- 衣料品店:自社製品の衣類(ポリエステルなど)
- 飲食店:プラスチック製のおもちゃ(ハッピーセットなど)
3. 回収されたプラスチックの行方(リサイクルの種類)
回収された廃プラスチックは、選別・洗浄された後、主に3つの方法でリサイクルされます。

ケミカルリサイクル
廃プラスチックを化学的に分解し、分子レベルの原料や油、ガスに戻して再利用する方法です。マテリアルリサイクルが難しい汚れたプラスチックや、複数の素材が混ざったものでも処理できる技術として期待されています。

サーマルリサイクル (熱回収)
廃プラスチックを燃やす際に発生する熱エネルギーを回収し、利用する方法です。
日本の現状: 日本ではプラスチックの再利用率が低いことに加え、生ごみを焼却する割合が非常に高く、ゴミ全体の再利用率は低いです。ヨーロッパでは生ごみのコンポスト率が高いことも見習うべきところですが、一人一人のゴミの排出量が日本は多いという点も、改善できる点だと考えられます。
4. 私たちにできる4つのアクション

| プラスチック | 紙 | 缶 | ペットボトル | (ごみ全体) | |
| EU加盟国 | 約30% | 約75% | 約75% | 約42% | 約49% |
| 日本 | 25.9% | 81.5% | 96.6% | 86.0% | 19.9% |
廃プラスチック問題の解決には、私たち一人ひとりの行動が不可欠です。
- 正しい分別と排出 リサイクルの品質は、家庭での「分別」にかかっています。自治体のルールをよく確認し、正しく分別しましょう。
- 「プラマーク」を確認する。
- 汚れている容器は、軽く洗う、または拭き取る(※汚れが落ちにくいものは無理せず、ルールに従いましょう)。
- リデュース・リユースを心がける そもそもプラスチックごみの量を減らすことが最も効果的です。
- マイバッグ、マイボトル、マイカトラリー(スプーンなど)を持ち歩く。
- 詰め替え用製品を選ぶ。
- 過剰な包装は断る。
- 店頭回収を利用する ペットボトルや食品トレーは、スーパーの回収ボックスを積極的に利用しましょう。リサイクルルートが確立されているため、高品質なリサイクルにつながりやすいです。
- リサイクル製品を意識する 再生プラスチックを使用した製品を選ぶことも、リサイクルの輪を支える大切な行動です。
廃プラスチックを回収・買取しているお店

良い買取業者の選び方と注意点
「高く買います」という言葉だけで業者を選ぶのはリスクがあります。以下のポイントを確認しましょう。
1. 許認可とリサイクルルートの確認 その業者は回収した後、どこでどのようにリサイクルしているのか? 不法投棄や不適正処理(ただ海外に輸出して終わり、など)を行う業者に関わると、排出事業者としての責任を問われる可能性があります。「リサイクル化証明書」などを発行できる、透明性の高い業者を選びましょう。
2. 少量回収への対応 ある程度の量(トラック1台分など)がまとまらないと回収に来てくれない業者もあれば、小口回収に対応している業者もあります。自社の排出量に合った業者選びが大切です。
3. 試し引き取り(サンプル評価) いきなり契約するのではなく、まずはサンプルを見てもらい、「これは有価物になるか?」「キロいくらになるか?」を見積もりしてもらいましょう。相場は変動するため、定期的な見直しも重要です。
プラスチックを買い取ってくれる業者の紹介
株式会社エコマネジメント
住所:大阪府東大阪市菱屋東3-7-18
TEL:072-926-4350
事業:廃棄プラスチックや原料を買取り、再生原料として加工・リサイクルします
ヒフミ産業株式会社
住所:兵庫県姫路市網干区浜田1588
TEL:079-272-3333
事業:プラスチック製品の買取とプラスチックの原料再生
日達株式会社
住所:滋賀県甲賀市水口町伴中山1894-7
TEL:0748-62-4601
事業:プラスチック製品のリサイクルと再利用。工場でのリサイクル可能なプラスチックの製造と加工、および幅広い取引業務
有限会社 興永商事
住所:兵庫県加古郡稲美町加古3175-13
TEL:079-492-3413
事業:プラスチックの加工をメインに、原料販売や、着色、廃プラスチックの買い取りなど
株式会社恒奇通商
住所:茨城県坂東市寺久1317-6
TEL:0297-20-9007
事業:廃プラスチックの買取、リペレットの製造・販売
URL:http://www.kouki-trading.jp/index.html
まとめ
廃プラスチックの回収は、美しい地球環境と限りある資源を未来に残すために不可欠な取り組みです。リサイクルの技術は日々進歩していますが、その第一歩は、私たち一人ひとりが「正しく分別し、適切に回収に出す」ことから始まります。
まずは今日から、ごみ箱に入れる前のワンアクション(洗う、分別する)を意識してみませんか。










