クルエルティフリーとは?動物実験をしない選択と、日本で出会えるブランドたち

最近、「クルエルティフリー(Cruelty-Free)」という言葉を、化粧品や日用品のパッケージで見かける機会が増えていませんか?
これは、製品を選ぶ際の「価格」や「品質」に続く、新しい倫理的な基準として世界的に注目されています。しかし、具体的に何を意味し、なぜ重要なのでしょうか。
この記事では、「クルエルティフリー」の基本的な意味から、その見分け方、そして私たちが日本国内で手に取ることができるクルエルティフリーな企業やブランドについて、詳しくご紹介します。
「クルエルティフリー」とは?
「クルエルティフリー」とは、直訳すると「残虐性(Cruelty)がない(Free)」という意味です。
具体的には、化粧品や日用品、その原材料の開発・製造・流通など、製品が消費者の手に届くまでのいかなるプロセスにおいても、動物実験が行われていないことを示します。
「ヴィーガン」との違いは?
よく似た言葉に「ヴィーガン(Vegan)」がありますが、意味は異なります。
- クルエルティフリー: 動物実験をしていない。(製品のプロセス)
- ヴィーガン: 動物由来の成分(ハチミツ、コラーゲン、ラノリン、カルミンなど)を含んでいない。(製品の中身)
クルエルティフリーであっても動物由来成分(例:ハチミツ)を使っている製品もあれば、ヴィーガン製品であっても動物実験が行われている(または第三者に委託している)ケースも理論上はあり得ます。両方の基準を満たす「ヴィーガン&クルエルティフリー」を掲げるブランドも増えています。
なぜ動物実験が行われてきたのか?
従来、化粧品や日用品の安全性を確認するため、動物を用いた試験が広く行われてきました。
代表的なものに、ウサギの目に化学物質を点眼して刺激性を測る「ドレイズ試験」や、モルモットの皮膚に物質を塗布してアレルギー反応を見る試験などがあります。これらは動物に大きな苦痛を与えるものでした。
しかし近年、倫理的な観点からの反対運動や、動物と人間の体の構造の違いによるデータの不確実性から、動物実験の必要性そのものが見直されています。
動物実験をしない「代替法」
現在では、動物を犠牲にすることなく、より高い精度で安全性を評価できる「動物実験代替法」が科学的に確立され、国際的に承認されています。
- In vitro(試験管内)試験: 培養したヒトの皮膚細胞や角膜モデルを使用する。
- In silico(コンピュータ)試験: 既存の膨大なデータに基づき、化学物質の毒性をコンピュータで予測する。
- 既存成分の活用: すでに安全性が確認されている何千もの成分リストを活用する。
日本と世界の「動物実験」の現状
- 世界の動向: EU(欧州連合)では2013年に、化粧品の動物実験(製品および成分)と、動物実験された化粧品の販売が全面的に禁止されました。これに続き、イスラエル、インド、オーストラリア、韓国、台湾など多くの国や地域で同様の規制が広がっています。
- 日本の現状: 残念ながら、日本では化粧品の動物実験を禁止する法律はありません。 ただし、既存の成分リストのみを使用して製造される「一般化粧品」については、動物実験は義務付けられてもいません。つまり、メーカーが「動物実験をしない」という方針を自主的に選ぶことが可能です。一方で、美白やシワ改善などを謳う「医薬部外品(薬用化粧品)」や、新規の化学成分を使用する場合は、安全性確認のために動物実験が要求されるケースが依然として存在します。
クルエルティフリー製品の見分け方「認証マーク」
消費者がクルエルティフリー製品を簡単に見分けられるよう、信頼できる国際的な認証マークが存在します。製品パッケージにこれらのマークがあるか探してみましょう。
1.リーピングバニー (Leaping Bunny) 国際的な動物愛護団体の連合(CCIC)による認証で、最も基準が厳格と言われています。自社だけでなく、原材料のサプライヤー(供給元)まで遡って動物実験を行っていないことを証明し、毎年の更新と抜き打ち監査が求められます。

2.PETA (PETA認証) アメリカの動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々(PETA)」による認証です。企業からの宣誓書に基づいて認証されます。ウサギの耳をかたどったマークが特徴で、「クルエルティフリー」と「クルエルティフリー&ヴィーガン」の2種類があります。
3.CCF (Choose Cruelty Free) オーストラリアの認証マークです。リーピングバニーと同様に厳しい基準で知られています。(※現在はLeaping Bunnyプログラムと統合されています)
日本でクルエルティフリーに取り組む企業・ブランド
日本国内で購入しやすい、または動物実験を行わない方針を明確に掲げている日本のブランドをいくつかご紹介します。(順不同)
【日本発のブランド例】
- OSAJI (オサジ) デリケートな肌に寄り添うスキンケアブランド。動物実験を行わず、代替法を採用することを明言しています。
- naturaglace (ナチュラグラッセ) 100%天然由来・オーガニック原料にこだわるコスメブランド。
- MiMC (エムアイエムシー) ミネラルファンデーションで有名な、クリーンビューティーの先駆け的ブランド。
- AMRITARA (アムリターラ) 国産オーガニック原料にこだわるコスメブランド。
- シャボン玉石けん 無添加石けんの老舗メーカー。古くから動物実験を行わない方針を貫いています。
- NEMOHAMO (ネモハモ) 植物を丸ごと使った製法が特徴のサステナブルなコスメブランドです。
【日本で人気の海外ブランド例】
- LUSH (ラッシュ) 「動物実験反対」をブランドの核として強く掲げ、長年キャンペーン活動も行っています。リーピングバニー認証も取得しています。
- THE BODY SHOP (ザボディショップ) 創業当初から動物実験反対を訴え続けている、クルエルティフリーのパイオニア的存在です。
- Aesop (イソップ) オーストラリア発のスキンケアブランド。全製品がヴィーガンであり、リーピングバニー認証を取得しています。
- WELEDA (ヴェレダ) スイス発のオーガニックコスメブランド。
※大手企業の方針に関する注意点
資生堂や花王、コーセーといった日本の大手化粧品メーカーは、日本国内における自社開発での動物実験は原則廃止し、代替法への移行を宣言しています。
ただし、過去において「中国市場など、法律で動物実験が義務付けられている国・地域」で製品を販売するために、現地当局による動物実験を受け入れていた(または第三者に委託していた)経緯があります。
このため、厳格な国際認証(リーピングバニーなど)は取得していないケースが多く、「クルエルティフリー」と断言しにくいグレーな側面がありました。 (※注:中国の規制も近年変更されつつあり、この状況は変わりつつありますが、ブランドを選ぶ際の知識として知っておくと良いでしょう)
まとめ:私たちができること
クルエルティフリーは、私たちが毎日の買い物でできる、動物や環境に配慮した倫理的な選択(エシカル消費)の一つです。
すべての製品を一度に変えるのは難しいかもしれませんが、まずは今使っているブランドの方針を調べてみたり、次に買うときに認証マークを探してみたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
その小さな選択が、動物の犠牲を必要としない、よりクリーンな未来につながっていきます。









